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おいしいごはんを食べたい時、気になるのは、最近話題のおいしくごはんが炊けるIH炊飯器ですか? 数ある炊飯器から1つ優れものを選ぶとしたら、機種の特徴など色々と調べて吟味するはずです。ですが、肝心のお米はどうでしょうか? いつも食べている身近なお米については、何となくイメージで決めたり、値段で決めたりしていませんか? お米のことをほんの少し知っているだけで、高性能の炊飯器に頼らなくても、ごはんの味をおいしくすることができるのです。今回、おいしいごはんの味の決め手となるお米について、東京・調布市にある老舗お米専門店の「株式会社山田屋本店」代表取締役社長秋沢淳雄さんに伺いました。

株式会社山田屋本店 代表取締役社長 秋沢淳雄さん

株式会社山田屋本店は明治38年創業。現在、調布本店のほか、都内3カ所に直営店(銀座三越店、新宿高島屋店、町田小田急店)を構える。



お米を選ぶコツは、まず自分の好みを知ることから

日本精米工業会(以下、精米工):
「お米は現在、260品種、705銘柄(平成27年度)あるといわれています。スーパーや専門店などでは色々な品種や銘柄のお米が置かれていますが、その中からおいしいお米を選ぶ目安やコツは何かありますか?」 

秋沢氏:
「お米は、北海道から九州まで色々な品種がありますが、今、栽培されているお米は、どれもおいしい。ただその品種の特徴が、自分の好みと合うかどうかで、おいしさが決まると思います。ですから、選ぶコツは、まず、自分の好みを知ること、自分のおいしさの基準を持つことですね。例えば、もっちり系の粘りのあるごはんを好むのであれば、“ゆめぴりか”がおいしく感じるはずです。もっと粘りのあるごはんを好むのであれば、“ミルキークィーン”が口に合うはずです。その逆にあっさり系の味が好みの人には、“あきたこまち”が食べやすい。できればお米を少量ずつ購入していただいて、食べ比べで自分の好みを知ってお米を選ぶと、よりごはんをおいしく味わうことができますよ」



精米したお米の大敵は、酸化とにおい

お米を選ぶコツは、まず自分の好みを知ることから

精米工:
「おいしいお米を選んだあとは、どのようにしてお米を保存すると、おいしさを保つことができますか?」

秋沢氏:
「精米した後のお米は空気に触れると酸化して、味が落ちてきます。また、室温20度以上の所にお米を置いておくのも、劣化を招く原因になります。劣化を防ぐには、お米を購入したら、袋から出して密閉した容器に移し替えて、冷蔵庫の野菜室に入れて保存することをおすすめします。野菜室のような10度以下の温度が、お米には快適な環境なのです。また、お米はにおいが移りやすいので、冷蔵庫にある肉や魚などの色々なにおいを吸収してしまいます。ですから、お米は必ず密閉してください。もう一つ注意したいのは、保存期間です。お米は野菜室に保存しても時間が経てば、味は落ちますので、1カ月以内を目安に、食べ切るようにしてください」



お米は研ぐではなく、洗う時代に

精米工:
「精米の技術が進歩しているため、お米の質がよくなったといわれていますが、お米に合わせてごはんの炊き方を変えたほうがよいでしょうか?」

秋沢氏:
「精米の技術が昔と比べ、格段に良くなっています。今の精米技術は、お米に負担をかけないように、精米工程を3回に分けて、米粒の表面を少しずつ削って摩擦熱でぬかを除去して精米できるようになりました。そのため昔と違って、ぬかが残るということもありません。昔は精米してもぬかが残っていたから、一皮剥ぐためにお米を研ぐと言っていたのです。手の平をお米に強く当てて、ぎゅぎゅとすり合わせて研ぐと教えられていたと思いますが、今はお米を洗う時代なのです。お米をしっかり研いでしまうと、お米に傷がついて、炊いている時にお米が割れてしまうことにもなります。これから、お米は“洗う”ようにしてください」



おいしいお米を炊くヒント 水ではなくお米の量

精米工:
「お米の研ぎ方のほかにも、ごはんの炊き方で、昔とは変わったことや気をつけることは何かありますか?」

秋沢氏:
「昔は古米臭といって、夏にお米が劣化してぱさぱさになったので、ごはんを炊く時は水を増やす必要がありました。逆に、新米の時は、水を減らすと言われていました。今のお米は、水を調整する必要はありません。精米工場の低温倉庫で、お米を一定の温度15度、湿度60~70%の状態に保存しているので、一年中新米と変わらないおいしい状態が味わえるのです。むしろ、気を付けたいのは、お米の量です。計量カップの上までお米を入れたとしても、軽くカップを叩くと、まだお米が入りますよね。計量カップは、正確にお米を計量できないのです。水の量は毎回同じでも、カップの米の量は違うので、ごはんを炊く度に味が変わってしまいます。面倒かもしれませんが、1合の重さを150gと決めて計量すると、いつも同じおいしいごはんが炊けますよ」



精米技術の進歩とともに、ぐんとおいしさを増しているごはんの味。そのおいしさを伝えようと、日々情熱を持って取り組んでいるのが、街のお米屋さんです。お米のプロに聞けば、今まで味わったことのないごはんの味とも出合えるはずです。

取材協力:株式会社山田屋本店
http://www.okomekan.net/